「七瀬、なんで朝来てくれなかったの?」


「いつまで私に頼るの?別に私じゃなくてももう大丈夫でしょ」



七瀬以外に誰が俺のモーニングコールをしてくれるんだよ。



そう言おうとしたけどやめた。


だって、七瀬の様子がおかしい。



「七瀬、なんで泣いてるの…?」


「っ…、泣いてなんかない」


「でも、七瀬…」


「伊織は私じゃなくても大丈夫って言ってるの!」



俺が七瀬の腕に伸ばした手を見事にすり抜け走り出す。



「七瀬っ…!!」



走り出した七瀬を追いかけて、七瀬の腕を掴む。


七瀬も運動神経は良いけど流石に俺には敵わない。



「七瀬、落ち着いて」


「やだっ、離して!伊織は私じゃなくても大丈夫なんでしょ!?」



そう言って俺の腕を振り払うと、結局家まで走って行ってしまった。



なんだよ、それ。


俺そんなこと言ってないじゃん…。


七瀬じゃないと嫌、なんて今までは言えなかった。


でも、実際七瀬じゃないと嫌だし、他の女なんて怖くて信用できない。


七瀬がいいのに…。


俺の前には七瀬はいない。


なんで…。


なんのために、この学校に来たんだよ…。


七瀬に俺だけを見て欲しくて、


七瀬に俺のことを少しでも考えて欲しくて、


彼氏ができたなんて聞いて不安になって、


親の反対まで押し切った。


なのに結果はなぜかわからないけど七瀬に嫌われた。