「今日、浴衣なの?」


「んーん、今年は浴衣いいの。


着るの案外面倒だしね。いざとなったら走れるぐらいがちょうどいいの」



そう言うと、七瀬は前を向き直してずんずん歩いて行く。



セミが鳴いている。



うるさい。



とても耳障り。



でも、今は俺の気持ちの隙間を埋めてくれてる気がした。