「そう、ですかね?」


「うん。風邪引き気味なら理沙のことおばあちゃんに預けるから帰ったほうがいいわよ?」


たしかに朝から頭は重い。


これが風邪だったら早く帰らなくちゃだよね。


ここには産まれたばっかりの赤ちゃんがいるわけだし。


「そうさせてもらっていいですか?」


「ええ、身体には気をつけなきゃダメよ?」


「はい、ありがとうございます」


薄く微笑むと頭を下げて病室を出る。


後ろからお兄ちゃんがついて来た。


「送ってく」


「ありがと」


お兄ちゃんの車に乗り込んで外を見ていると、しばらくして車が進んだ。


「…伊織となんかあったか?」


な、なんでわかるの。


どうして…。



「別に」


そう答えたけど、当たっている。


菜月ちゃん、やだなぁ。



「七瀬が体調崩すのは昔から伊織絡みばっかりだったよ」


「そんなことないよ」


「俺、七瀬の兄貴なんだから。


そんなことあるんだよ」


そう言って少し笑うお兄ちゃん。



「…伊織のいとこが今日泊まってるの。伊織の家に」


「そうか」


自然と口から言葉がこぼれていく。


お兄ちゃんも聞いてくれている。



「…もともと、私が泊まる予定だった」


「うん」


「そしたら急にいとことかいう女の子がきて、家出したから泊めろって」