「無理…」


「え?」



私は伊織の背中に抱きついた。



「な、七瀬?ほんとダメだから。俺自信ないって…」


「やだもん。この前はぎゅーしてくれたもん」



なんかもう、子どもみたいになりながら、わがままとわかりつつ、それでも伊織を困らしてしまう。


「はぁ、もうわかったよ」


伊織はそう言うとくるりとこっちを向いて、抱きしめてくれる。


「えへへ」


「もう。七瀬に甘えられたら断れないじゃん。


そんなに可愛くなっちゃって…よくないよ、もう。心臓に悪い」


「安心するもん。伊織の匂い」


「七瀬キャラ崩壊してるよ」


「いいのー、甘えたい気分なのー」



そう言って目をつむる。


大好きな人に抱きしめられている温もりと、大好きな人の香りがすぐ近くにある安心感で、私はすぐに眠りについた。


「ほんとにもう、男泣かせなヤツめ…」


そんな苦笑いをした伊織のつぶやきも知らないままに。