【短】Wonderful Moment

「海洋くん!」

「そんなに声出したいなら、俺に付いてきて?」


そう言うと、彼は鼻歌を口ずさみながら、私の手をガッチリと掴んだままで席を立ち歩きだした。


「ちょ、ど、どこ行くの?!」

「んー…二人きりで話せるとこ、かな?」


すっかり雰囲気の変わってしまった彼の行動に、全く頭が追い付かないまま、私は人工芝で埋め尽くされたグラウンドへと連れて行かれる。

そのグラウンドの周りにある木陰まで来ると、彼はにこにこしながら、私の方を振り返る。


「新田さん?」

「は、はい?」

「………」

「…?」



じっと私の顔を見つめて、何も言葉を続けない彼。
それを不思議に思って、小首を傾げる。

ほんとに、彼はどうしたんだろう?全然雰囲気が違うよ…。


そう思っていると、彼が徐に口を開いた。



「ねぇ?新田さん、今新田さんが思ってること当てようか?」

「へ?」

「『ほんとに、海洋くん、どうしたんだろう?全然雰囲気が違う…』」

「え?!な、なんで?」

「新田さん顔に思ってること出やすいから…」