翌日は試験返却だった。

 かなりぎりぎりではあったけど、僕には赤点はなかった。

 凛もセーフだった。

 高志は数学が赤点だったけど、先生に呼び出されて、とりあえず次の学年末試験でちゃんとやれば進級はできると言われたらしい。

「よかったよ。もう、人生終わるかと思ったぜ」

 マジ泣きするなよ、高志。

「年明けから頑張りなよ」と凛も頭をなでて励ましている。

 凛が優しいなんてめずらしい。

「今から頑張れ」と言わないところも、高志のことをよく分かってる。

 二人は今日も学校帰りにどこかに行くらしい。

「昨日はガストでしょ、今日はどこ行く? やっぱりガスト?」

「またかよ」

「だってガストのパフェ、おいしいじゃん」

「飽きるぜ」

「あたしはあんたとなら毎日でもいいんだけどな」

 高志が頭をかいて照れている。

 凛が僕にぺろっと舌を出す。

 高志、後ろ後ろ。

 チョロすぎだろ、高志。

「でもさ、全部俺のおごりなんだぜ」

「文句あるの?」

「ございません」

 高志が頭を下げると、凛が背中にエルボーを突き落とす。

 なんでこれで高志はうれしそうなんだろうか。

 僕には分からない趣味だな。

 でも、楽しそうでうらやましいよ。

 そんな感じで学校はもう冬休みに向けてダラダラした雰囲気になっていた。

 校門を出て一人で歩く。

 若松神社や笹山公園に行ってみたけど、先輩には会えなかった。

 スマホに連絡を入れてみても、既読はつくけど返信はない。

 祈れと言われたとおり、僕は日曜日に会えることを祈っていた。

 凛と高志は楽しそうなのに、僕は先輩とは会えなくなっている。

 何だか不公平だった。

 でも、デートを待つ楽しみというのも、こういう時にしか味わえないものなのかもしれない。

 こういう経験も大事なんだろう。

 自分にそう言い聞かせながら日曜日を待っていた。