お会計を済ませてお店を出た。

 おなかは満たされたけど、財布は空になってしまった。

「これからどうする?」

 凛はまだ遊びたいような顔をしていたけど、僕は財布のせいで何もする気が起きなかった。

「帰ろうかな」

「先輩はどうしますか?」

「私はおまえ達がいなくなれば消える」

「私たちに見えているときは他の人にも見えていて、私たちが見ていないときは他の人にも見えないってことでしたっけ」

 凛は自分で言っていて、あまりよく分かっていないようだった。

「ま、いっか、じゃあ、うちらはこれで」

 僕らは先輩に手を振った。先輩も手を振ってくれた。

 旧唐津街道から駅に向かって歩く。

「さっき、なんで先輩にあんな事聞いたんだよ」

「あんな事って?」

「僕のことが好きかどうか」

「違うよ」

 ちがう?

「どう思うかって聞いただけだよ。そしたら好きだって言ってたんじゃん」

 ああ、まあ、確かにそうだけど。

「だから、どう思うなんて、どうしてそんなことを聞いたのかってことだよ」

「だって、あんただって、知りたかったでしょ。だから代わりに聞いてあげたんじゃないよ」

「よけいなおせっかいだろ」

「でも、好きだって言ってもらえて良かったじゃん。あのまま二人でデートでもしてくればよかったのに」

 そうじゃないよ。

 凛は分かっていない。

「先輩が僕に好意を持ってくれているって分かっちゃったら、かえって一緒にいづらくなったじゃないかよ」

「なんで?」

「だって、なんか意識しちゃうじゃんか」

 実際僕は本当に凛が気まずくさせるためにあんな質問をしたんじゃないかと疑っていたくらいだ。

 それに、幽霊の先輩にとって本当に好きという気持ちが通じているのか、僕には分からなかったのだ。

 とても素敵な人に言ってもらえた『好き』という気持ちが信じられないというのはなんとも悲しいことだった。

 凛は無邪気に微笑んでいる。

「照れくさいのは最初だけでしょ。一緒にいればすぐになれるよ」

「凛はどうなんだよ?」

「あたし? あんたと?」

「違うよ、高志とだよ」

 凛が急に黙り込んでしまった。