それよりも、今日も高志とは合流しなかった。

 逃げていないで直接ぶつかればいいのにな。

 高志はもう教室にいた。

 席に着いて目を閉じて居眠りをしているようなふりをしていた。

 ふりだと分かったのは、時々凛の方を見ていたからだ。

 試験勉強をするか凛に謝るかどっちかをやればいいのに、目を瞑って時が流れるのを待つだけって、子供じゃないんだからさ。

 ただ、高志は昔からそういうやつだった。

「実行力はないけれど志だけは『高志』だぜ」と選挙のおじさんみたいなことを言って、何か失敗をすると首をすくめて目を閉じて大人が怒っているのをただ黙ってやり過ごしていた。

 だから、何も解決しなかったし、失敗から学ぶこともなくて、調子に乗って同じ失敗を繰り返す。

 でも、今回の件は、今までのような失敗とは違うはずだ。

 大事なものを失ってしまうのに、それで良いのかよ。

 それにしても、僕の方も他人の心配をしている場合じゃなかった。

 今から試験範囲の確認をしないとな。

 今日の試験も絶望的だ。