校門に高志が立っていた。

 軽く右手を挙げて僕らに手を振っている。

「おせえぞ。どうした、遅刻だぞ」

 突進していった凛が鞄を振り回す。

「痛ってえ」

 まふゆさんが二人の様子を見て驚いている。

「あれがカレシさんですか」

「うん、鴻巣高志っていうんだ」

「仲良いですね」

「だろ。あれでさ、意外と凛の方が夢中なんだよ」

「そうなんですか」

「朋樹、何か言った?」

「ものすごい悪女だから、言ってること信じちゃダメだって教えてあげてた」

「うふふ、そんなにほめないでよ」

 凛がまたまふゆさんに顔を寄せてささやいている。

「こいつね、あたし達をくっつけるために頑張ってくれたすごくイイやつだから。まふゆちゃん、よろしく頼むね」

「信じちゃダメなんですよね」

「さあどうでしょう」

 そこはちゃんと肯定しろよ。

「ねえ、まふゆちゃん」

「なんですか」

「パンツの話はホント」

「やっぱりそうなんですか」

「あとね」

 凛が僕を指さす。

 まふゆさんが耳を寄せる。

「あたしが、昔こいつのこと好きだったことがあるのも、ホント」

 え、そうだったの。

 初耳なんですけど。

 目の奥に鈍い痛みが走る。

 まふゆさんが僕をにらみつける。

 凛がにやけながら耳打ちする。

「こいつ、すごく驚いてるでしょ。さて、今の話はホントでしょうか、嘘でしょうか」

「えー、もう、どれがどれだか分からないですよ」

 まふゆさんがまたフグみたいに頬を膨らませた。

「ほんと、悪女ですね、凛先輩は」

「またほめられちゃった」

 凛がうれしそうだ。

 痴話げんかで遅刻だよ。

 一度もモテたことないのにさ。