一



「ふりだしに戻る……かぁ」

 地味メンのナイキくんは、なんと王子様だった。

 その二面性は魅力的だ。

 俺様なところも口を開けば毒ばかり吐くところも、一部の女子ウケは抜群に良さそう。

 もっとも舞台の上では性格がいくら捻くれていようが、実力がすべてだ。

 彼は期待値が高くスター性もあれば、私のことを助けてくれた恩だってある。

 そんな彼に素敵な世界を見せてあげたいって。

 そんな彼とだからお芝居したいって思えたのに。

 一番言われたくないことを言われてしまった。

【お遊びに付き合ってる暇ねぇわ】

 こっちは真剣なんだ。

【部活に青春を捧げるとか、くだらねーんだよ】

 それじゃあナイキくんにとって有意義なことってなに?

【俺を巻き込むな】

「あのクソダサ丸眼鏡……」
「おいおい。キャラが崩壊しているぞ、吉川」

 ポン、と背中を叩かれた。