ここまで一途な姿を見せられたら、どうにかアドバイスをしてあげたいとは思うものの、私だって恋愛に関しては初心者みたいなものだ。
適切なアドバイスなんて……と頭を悩ませていたとき、不意に松浦さんと飲んだときのことを思い出した。
『俺、ひとり暮らしだけど、昼休みに言ったとおり、他人の料理がダメなんだよ。そうなるともう自分で作ったほうが楽だし』
そうだ。麻田くんだって……と思い、口を開く。
「だったら、もう、麻田くんが料理担当になったら? 彼女を否定するんじゃなくて、麻田くんの趣味を料理にしちゃえば、傷つけなくて済むんじゃない?」
箸を止めて言うと、工藤さんも「ああ、それいいかも」と同意する。
「料理を趣味に……」
キョトンとした顔で呟く麻田くんにうなずく。
「試しに料理してみたらハマっちゃってとか、理由を作れば、彼女だって麻田くんが料理することに反対はしないんじゃない?
料理は麻田くんが作って、あと片付けとか、掃除とかそういうことは彼女にお願いするとか。そういう習慣にしちゃえば、もしも結婚ってなってもそのままの担当でいける……」
「いけますね……っ! そっか、なるほど!」
ゾンビだった頃の名残を表情から消した麻田くんが、キラキラした瞳で見つめてくるから、椅子に座ったまま後ずさりしそうになりながら、苦笑いを浮かべた。



