「告白したのに今まで通り、なにもなかったみたいに過ごすとかおかしくない? 友里ちゃんが〝好きだ〟って言ったのは夢でもなんでもなく事実だろ。
なのに、なんでふたりして見ない振りしてるのかが俺にはわからない」

「それは……だって……」
「頑張って告白したんだろ? だったら波風が立つのが当たり前なのに、それを、さも聞かなかったみたいな態度とられるのは……まぁ、俺だったら嫌だって話」

広い道路にはひっきりなしに車が走っているし、歩道だってそれなりに混んでいる。
駅まで伸びる道は雑音だらけだっていうのに、松浦さんの声がしっかりと耳に届いていた。

告白したあと、〝今まで通りに〟ってお願いしたのは私だ。だから加賀谷さんはそうしてくれている。

だって、同じ職場だ。席だってふたつ隣なんだから、気まずいままじゃ仕事にならない。

それでもなにも言い返せないのは、〝今まで通り〟の加賀谷さんに安心の裏で虚しさを感じていた部分があるからだろうか。

それを……松浦さんに言い当てられてしまったからだろうか――。

……違う。違う。そうじゃないと、自分に言い聞かせるように繰り返し、下ろしたままの両手をそれぞれぎゅっと握った。

「恋愛じゃなくても、〝これからなにがあっても味方だよ〟とかたまに聞くけど。そんな約束するヤツっておかしいんじゃないかってずっと思ってた。なにがあっても変わらない関係なんかあるわけないだろって」

最後に「そういうのって気持ち悪い」と吐き捨てるように言われ……カッと頭に血が上ってしまった。

立ち止まった私に気付いた松浦さんが、数歩先で止まり振りむく。
その顔を、きつく睨みつけた。