「第二品管の仕事量が多いって話だけど。とりあえず、これから受けた仕事内容を全部記録しておくといいよ」
「記録ですか? 一応、日報には全部書いてますけど……個人じゃなくて、部署全体で受けた仕事をまとめて記録しておくってことですか?」
「そう。年間通して、どういった種類のどれだけの仕事が回されたってことを記録しておいて、ある程度たまったら〝仕事量が多すぎてきつい〟〝これは本当に第二品管の仕事なのか〟って議題にあげるといいよ」
「でも、雑用が回されるたびに、割と毎回しっかり断ってますよ。それでも、結果回されちゃいますけど」
多田部長がなんでもかんでも安請け合いするせいで、とは言わずにいると、松浦さんは「口頭だけじゃ、なんの証拠も残らないからね」と説明してくれる。
「しっかりと証拠として残しておく方が、会社は動く。今は、労働基準がどうとか社内の雰囲気がどうとかうるさい上、うちの会社は顧客離れを防ぐためにも世間に対してクリーンなイメージを保っていたいっていうのが一番にあるだろ」
「そうですね」
だから、クレームに対しても不誠実な対応はとらないし、パワハラセクハラに対しても国内企業のなかでもトップクラスに厳しいと思う。
よほど気に入ってうちの商品を買い続けてくれているひと以外は、案外、小さなきっかけで他社製品に切り替えてしまうからだ。
「クリーンでいるためには、社としては社員の不満は把握しておかないとまずい。最悪な事態……例えば、過労死だとかそういう事態が起きた場合、〝なにも知りませんでした〟はあまりに不誠実で社員に寄り添っていない回答で、世間もそうとる」
こちらを見た松浦さんに「だから、友里ちゃんとこの尾崎さんのケアを異常なくらいにしてるだろ?」を聞かれ、うなずく。



