オオカミ御曹司、渇愛至上主義につき



それを聞いたとき、工藤さんが『どこかが当てれば、それを他社もこぞって真似するんだからオリジナリティなんてないも等しい』なんて言っていたけれど……。

今回のは、松浦さんがとっくに提案していた上、却下されたものだったのか。

だとしたら悔しいだろうな、と思い見ていると、松浦さんは「そう。それ」とうなずいてから視線を空に移し、自嘲するような微笑みを浮かべた。

「仕事は嫌いじゃないけど、たまに、足が止まったまま動けなくなるときがある。重りでもつけられてるみたいに」

その横顔を見て、この人もきちんと仕事しているんだよなぁと思い直す。

恋愛に対してのスタイルがあんまりだから忘れていたけれど、企画事業部なんてしっかりと成績を残していなければ在籍できない。

その中でもホープだなんだって騒がれているんだから、松浦さんは仕事ができる人なんだろう。

……ということは、金子さんも仕事できるんだろうか。

なんとなく、そうは見えないけどなぁと考えていると、松浦さんがこちらを向いたのが視界の端でわかった。

「なんて。ごめんね。つまらない話して」

申しわけなさそうな笑みに、ふるふると首を振る。

「いえ。全然。私のほうこそ、〝暇そう〟みたいなことを言ってすみませんでした。失言でした」
「いや、いいよ。二週連続で待ち伏せしてたらそう思われても当然だから」

ははっと笑った松浦さんが「それより」と話を変える。