オオカミ御曹司、渇愛至上主義につき



企画事業部なんて、普段はうちの部署とはほとんど関係ないくせに、あんな面倒そうな雑用を持ってくるなんて……と思い出してイライラしてしまう。

「金子さん?」
「倉庫にスズメが入っちゃったからどうにかして欲しいってうちに頼みにきたんですよ。なんでも、加賀谷さんと同期だからそのよしみでって」

道路から控えめなクラクションの音が聞こえ、反射的にそちらを見る。
とっくに赤信号に変わったのに、これから横断しようとした人を車の運転手が注意したようだった。

「だから企画事業部が暇かどうかを聞いてたのか」と納得した様子の松浦さんが苦笑いを浮かべる。

「うちもそこそこ忙しいよ。今の部長は頭が固いから、奇抜な商品アイデア出したところでダメ出しされるし、かと言って新鮮さがなければそれはそれで〝もっと頭を使え〟って怒られるし」

松浦さんの眉尻を下げた横顔を見るのは初めてだった。それだけ、仕事が大変だってことなんだろうと思い……でも、そうだよなぁと納得する。

企画事業部なんて、社の要部署のひとつだ。企画力が必要とされるわけだし、私みたいに回ってきた仕事を処理すればいいわけじゃない。

なんでもかんでも自分発進の、常に新鮮さが求められる大変な部署だ。

金子さんのことで頭にきて、つい『暇なんですか?』なんて聞いてしまったけれど、失言だったなと反省する。

「この間、俺が約一年前に出したアイデアと似た商品が他社から発売されててさ。それの売れ行きがいいからって、今必死にそれに似た商品を売り出そうって商品開発部だとかは駆けずり回ってるよ」

「あ……製造ラインから作らないとダメなやつですよね?」

たしか、ペットボトルのサイズが今までとは違うから、機械からどうにかしないとって話を聞いている。