オオカミ御曹司、渇愛至上主義につき



別に、私は松浦さんが膨大な時間を無駄にしたところで関係ないしどうでもいい。

それでも、どこかの駅前にいる犬みたいな健気さを見せられてしまうと罪悪感みたいなものは湧いてくる。

寒空のなか、指先を赤くしてまで私を待っていられても困る。

「松浦さん。何度も言いますけど、私をおかしなゲームのターゲットにしていてもただの時間の無駄なんです。こんな風に私を待つくらいなら、もっと有意義な時間の使い方があると思います」

向き合い、目を合わせて続ける。吐く息が白く浮かんだ。

「まぁ、松浦さんのしているゲーム性の強すぎる恋愛の仕方はどうかと思いますが、それでも、私に時間を割くくらいなら他の方と過ごした方がまだ……なんですか?」

話の途中から、松浦さんがやたらとにこにこしているから不思議になって聞く。

決して微笑むようなことを言っているわけじゃないのに、なんでこんな顔されているんだろう……と考え、思い当った可能性に眉を寄せた。

「言っておきますけど。これは松浦さんを思っての発言じゃないですから。私が、いらない罪悪感とか持っちゃって迷惑ってだけで……」

「罪悪感持ってたんだ」

揚げ足をとられ、グッと黙る。
嬉しそうな顔で見てくる松浦さんには、やっぱりこれ以上言っても無駄な気がして、言葉を続けるのを諦め歩き始める。

当たり前のように隣に並んだ松浦さんに再度うんざりした顔を向けてみたけれど、笑顔が返ってくるだけだった。

本当に厄介な男に目をつけられてしまった。