それが三ヶ月前。そこから徐々に元気を取り戻した麻田くんは、無事立ち直り……なぜか松浦さんへの弟子入りを懇願するようになった。

なんでも『こんな難しそうな篠原さんおとしたとか、かなりの腕でしょ。だから』らしい。

そんな麻田くんに、工藤さんは『腕もだけど、その前にまずあの顔だからっていうのが大きいんじゃない』とバッサリ言っていたのが先月のことだ。

氷の浮かんだアイスカフェラテをストローで飲んでいると、工藤さんが「それにしても」とチラリと視線を向けてきた。

「カップル揃って社員旅行に出席とか、篠原、絶対に嫌がりそうなのに」

よくわかってるなぁと思う。
本来だったら、松浦さんも出席する社員行事に一緒に出るなんて絶対に嫌だし、速攻で断っている。……けれど。

「お願いされたんです。松浦さんに」

だから、仕方なくだと説明すると、工藤さんは珍しく口の端を上げる。

「へぇ。お願いされたら言うこと聞いちゃうんだ。ベタ惚れね」

言い返す前に、麻田くんが「愛だなぁ」なんてしみじみ呟くものだから、反論が遅れてしまう。

「そういうんじゃないです。ただ……誕生日プレゼントに一緒に社員旅行に行きたいっていうから、それで」