「松浦さんが、一時でも私のこと想ってくれたら……こんなふうに必死に追いかけてきてくれたら、裏切られること前提だとしても、信じてみようと思ってここで待ってたんです」

最後、「まさか二十秒足らずで、Tシャツにコート姿で出てくるとは思いませんでしたけど」と呆れたように笑われ、自分のしている間抜けな格好を思い出す。やけに寒いはずだ。

「必死だったから。……え、二十秒? もっと経ってたろ」

放心して考え込んでいたし、少なくとも数分はかかった気でいた。けれど彼女は「十八秒でしたよ」と答える。

「玄関のドア閉めてから数えてましたから間違いありません」

嘘だ。だってあれだけ考えて迷ったはずだったのに。
けれど、友里ちゃんが嘘をついているとは思えない。きっと、彼女の数えた時間が正確なんだろう。

ということは、グダグダ考えていた気でいたけれど、それは時間間隔がおかしかっただけで、実際はすぐに追いかけていたと、そういうことか。

「なんだ……そうか」

脳みそなんか置き去りにして身体は正直に動いていたのか。
それに気付いたら色々馬鹿馬鹿しくなって笑いが込み上げてくる。ひとり、クックと自分自身に笑ってから「友里ちゃんは強いね」と感心する。

冬の太陽の穏やかな日差しを受けながら、キョトンとしている彼女に続ける。

「俺だったら、裏切られてもいいなんて思えない」

やっと言っている意味がわかったという感じで、友里ちゃんは「ああ」となんでもない顔をして答えた。

「気持ちの大きさの問題だと思います」
「大きさって……」

今のだとまるで、裏切られてもいいほど俺を好きだって言っているように受け取ってしまい、どんな顔を返せばいいのかわからなくなっていると、彼女は口元に笑みを残したまま一度目を伏せた。

それから、もう一度俺を見上げ聞く。