目を覚ますと、すっかりと服を着た友里ちゃんが覗き込んでいて驚く。ガバッと上半身を起こした俺を見て、彼女は、ふふっと笑った。

ベッドの端に腰掛けたままこちらを見て笑う友里ちゃんとは、昨日想いを通わせ身体を重ねたはずなのに、なぜか距離を感じる笑顔に思えた。

遮光性の低いカーテン越しに朝日の気配を感じ、時計を確認すると七時を回ったところだった。

覚醒しきらない頭で、こんなふうに誰かと朝を迎えるのは初めてかもしれないと考えていた。

「おはようございます。勝手にシャワー借りちゃいました。すみません」

その顔になにか悲しみのような色が混ざっている気がした。

けれど、夢から覚めたばかりの頭は未だ霧がかかったようにぼやっとしたままで、探究するよりも先に思考回路はぷつりと切れる。

気のせいか……と片付け、笑顔を向けた。

「いいよ。友里ちゃんなら、この部屋のなにを使っても壊しても気にしない」
「じゃあ、手始めにその高そうな本でも破……」
「あー……ごめん。嘘。できたら故意には壊さないで」

ベッド端に置いてある本棚を見ながら物騒なことを言う友里ちゃんを慌てて止める。
彼女は俺に許可を得てから、並んでいる本に手を伸ばした。