オオカミ御曹司、渇愛至上主義につき



「ごめん、友里ちゃん……好きだ」

声にすればするほど気持ちが膨らむようだった。飽和状態の想いが出口を求め、身体の内から俺を急かす。

触れるだけのキスを繰り返してから、未だぴったりと閉じたままの唇にゆっくりと舌を這わす。
優しくゆっくりと進めたい気持ちと、今すぐにすべてを暴きたい気持ちがせめぎ合いジリジリと焼けるような熱さを感じていた。

友里ちゃんはわずかに震えたあと、それでも恐る恐る口を開いてくれる。

薄く開けられた隙間から舌を差し入れ、ゆっくりとこじあけて深くまで重ねると彼女の肩がまた少し震えた。

「……んっ」

友里ちゃんの口の端から零れる、くぐもった甘い声が耳を溶かすようだった。耳もろとも溶けた理性がドロドロと身体の奥に溜まっていく。

いい歳して、夢中になってがっついている自覚はあった。
異性を覚えたばかりの学生の頃だって、ここまで切羽詰まったことなんてなかったのに。今まで積み重ねてきた経験がまったく役に立たず、恨めしい。

俺なんかが、こんな綺麗な恋をできる友里ちゃんに触れていいのか。
友里ちゃんを前にしたら自分自身がひどく汚く思え、内心ためらいはあった。けれど、それでも――。

「友里ちゃん……っ、ツラくない?」

途中、何度も聞く俺に、彼女は微笑み首を振った。
汗の浮かぶ額にはりついた髪を指で避けてやると、その手を握られる。

そして、そこに唇を寄せる友里ちゃんを見たら、なぜだか涙が浮かびそうになるから、それを隠すように彼女を抱き締めた。