オオカミ御曹司、渇愛至上主義につき



「好きだ」

唇を重ねる直前で告げると、友里ちゃんは恥ずかしそうに……そして嬉しそうに、わずかにはにかみ目を閉じる。

言葉はなくても、それが彼女が俺を受け入れてくれたシルシなんだとわかり、嬉しさが胸の奥からクツクツと湧きあがる。

ずっと冷たかったそこが、熱を帯び、なんでだか喉の奥がキュッと縮こまり息苦しくなった。

別に、この歳になって〝両想い〟に憧れがあったわけではない。
恋愛に関しては冷めた考え方しか持っていなかったし、いつか誰かを本気で想えたら、なんてことを願ったこともない。

これまでの恋愛観は、自分で最低だなとは思うものの満足はしていた。満たされていなかったわけでもない。

それでも。
愛しくて堪らないと思った子に、こんなふうに自分全部を受け入れてもらえるのは……言葉にできないほど嬉しくて、身体中が多幸感で溢れていた。

こうしてキスをしてみて気づく。
ああ、俺は友里ちゃんにずっとキスしたかったのか、と。その権利が欲しかったのか、と。

権利だとか、感情に任せて好き勝手して傷つけたくないだとか、友里ちゃんに嫌われたくなくてそんな及び腰になっていた時点でもう答えなんか出ていたんだと、今、気付いた。

ただのゲームのターゲットだなんて、どの口が言ったんだと自分自身で呆れてしまう。