「神経質なくせに。そんな無防備に寝てると、イタズラされちゃいますよ」
こっちは、松浦さんのことで悩んだりドキドキしたりと、上がったり下がったりの急上昇に急降下を繰り返してぐったりだっていうのに、呑気に寝ている松浦さんが恨めしい。
簡単に私をターゲットから外して、日常のなかからも排除できてしまう松浦さんが……悔しい。
――いっそキスでもしてしまおうか。
八つ当たりみたいに思いついた考えを、正しいことか再考するよりも先に身体が動いた。
松浦さんを間に挟むように手をつき、真上から見下ろす。
それでも目を閉じたままの松浦さんをしばらく眺めたあと、ゆっくりと近づき……あと五センチというところで止めた。
衝動に駆られてしまったけれど、いくらなんでもこれは……と気付いたからだ。
恋愛ゲームなんて仕掛けてきた松浦さんには、例え私にキスされたって怒る権利はないと思うけれど……キスしたところで私が虚しくなるだけだ。
魔がさすってこういうことか。魔にさされきらなくてよかった。
そんなふうに考え、身体を起こそうとしたとき――。
「――なにしようとしてるの?」
グルン、と視界が回ったと思うと同時に、目の前ににこりと笑う松浦さんが現れる。
さっきまで寝てたのに、なんで……っていうか、この体勢……。
完全に形勢逆転されていた。
私をベッドに押し倒した状態の松浦さんは、私がさっきそうしていたように、私の顔の両脇に手をつき、微笑んでいた。



