ギシリとベッドが軋んでも起きない松浦さんの寝顔を眺め……ムッと口を突き出した。
そもそも、なんで避けたりしていたんだろうって時間差で頭にきたからだ。
この一ヵ月、あれだけ話して、ご飯を食べて、一緒の時間を過ごしたのに、それ全部が松浦さんにとってはゲームでしかなくて、無理だと判断したからってこんなあっさり手を引くなんて、あまりにドライすぎる。
動物だって、もっと情を持つ。
けれど……。
ターゲットにしていても時間の無駄だからって、私を避けるなんて……結局私は、松浦さんにとってそれぐらいの存在にしかならなかったってことだ。
そう考えたら、なんだか急に怒りが消えていく。
そうか。その程度の存在でしかなかったのかと気付いてしまったから。
「……私は、結構楽しかったんですけど」
誰に聞かれるでもない本音を呟き、松浦さんに手を伸ばす。
目にかかった髪が邪魔そうだから、それを指先でそっと払い……そのまま、頬に触れた。
くすぐったかったのか、「……ん」とかすかな声をもらした松浦さんに、ドキッとする。
初めて聞いた掠れた声が、耳のなかで何度もリピートするから、鼓動が速まったまま戻らない。
忙しい心臓はドキドキと響き続ける。
穏やかな寝息を立てる松浦さんと、胸が騒がしい私。
それはまるで、ここ一週間のふたりの温度差みたいに感じ、唇をかみしめた。



