「お譲さんがこんなに美人じゃなきゃ、ここまで手伝ってないよ、ほんとに……」
「すみません……。あ、ベッドに膝から上を寝かせてもらえれば……はい。ありがとうございます」
リビングダイニングからもれてくる明かりを頼りに、ベッドに松浦さんを寝かせる。
「はー……」と首をコキコキと鳴らした運転手さんは、疲れた顔で「じゃあ、私はこれで」とペコッと頭を下げ出ていくから、玄関まで送り届ける。
「おかげで助かりました。ありがとうございました」
「いやいや、仕事なんでね。じゃあ、どうもー」
終始明るかった運転手さんが出ていくと同時に、部屋がシンとなる。
遅れて、私もこのまま帰ればよかったのか……と気付いたけれど、鍵をどうしたらいいのかわからないし……と諦めた。
鍵を持って出ていくのも、鍵をおいてかけずに出ていくのも気が引ける。
正直、意識のない松浦さんの部屋に居座っているという今の状態も落ち着かないものの、仕方ない。
松浦さんが起きたら、事情を話して帰ろう。
松浦さんは基本的には優しいから、部屋まで送った私を怒るなんてことはないだろうし。本心ではどう思っていても、冷たい態度はきっととらない。
綺麗な部屋を抜け、寝室に足を踏み入れる。
リビングから入り込む明かりが、ぼんやりと松浦さんの姿を照らしていた。
リビング同様、綺麗に整頓された寝室には、ベッドと本棚があるだけだった。
シングルサイズではない、大きなベッドにスーツのまま仰向けで眠っている松浦さんに近づき、静かにベッドに腰掛けた。



