「はい。……友人なので。責任を持って送り届けます」

松浦さんの方は、友人と思っているかどうかわからないけれど。
だって避けられていたくらいだし。

それでも、住所を広められるよりは私が送ったほうがいいハズだ。
それに、酔い潰れた松浦さんに文句を言う資格なんてない。

「じゃあ、松浦のこと頼むな」

店前に既に到着していたタクシーに、松浦さんを乗せてくれた加賀谷さんが言う。
松浦さんの隣に乗り込んでから「はい」と笑顔を作った。


なんとか道案内に成功し、運転手さんの手を借りて松浦さんを部屋まで運び込む。
あらかじめ車内でお財布を漁らせてもらい、部屋のカードキーを抜いておいたから、一番ネックだと思われた玄関もすんなり開けることができた。

お財布に触るのは躊躇われたけれど、仕方ないと割り切った。
何度も言うようだけど、松浦さんに文句を言う資格はないはずだ。

「お、お譲さん、このひと、どこに置くの?」

齢五十を超えていると見える運転手さんの息は、部屋にあがった時点で既に切れていた。

「えっと、こっちです。ベッドがこっちなので……たぶん」

前回お邪魔したときは、寝室は確認していない。
けれど、もう一部屋あるのはドアの枚数でわかっていたし、リビングダイニングにベッドはないから、恐らくそこが寝室なんだろうと判断し、部屋のなかを進んでいく。

途中で明かりをつけると、相変わらずモデルルームみたいに綺麗な部屋が現れた。

「この人、上背ある上に筋肉質だけど、なんかやってんの? 運動」
「さぁ……でもたしかに重たいですね」

肩に回した腕はとても硬い。無駄な肉なんてまるでついていないみたいだった。

松浦さんの右側を運転手さん、左側を私で支えているけれど、運転手さんの方が背が高いから、自然とそちらに比重がかかってしまっていて申し訳ない。