「ぼーっと突っ立ってるなよな」

立ち止まったままの私は邪魔だったんだろう。

後ろからサラリーマンにぶつかられ、数歩よろけてしまう。おまけに頭にくるような言葉まで言われてムッとするも、たしかに悪いのは私だからなにも言い返せない。

気を取り直して階段を下り、ホームに出来た列に並び……大きく息をついた。

工藤さんは、私の加賀谷さんへの片想いを不毛だと言ったけれど。
いつ生まれていたのかわからないこの想いだって、不毛でしかない。

好きにさせた責任をとる気もないくせに、あんな全力で好きにさせようとするのだからひどい。

自分は怖がって誰にも本気にならないくせに、求めるものは本気の想いなんだから矛盾してる。

私が〝好き〟だって、〝好きになった〟って伝えたら、そこでおしまいになる関係なんて……ズルい。絶対にズルい。

「最低です。……松浦さん」

もう何度となく本人に告げた言葉は、入ってきた電車の音にかき消され、誰にも拾われることなく地面に落ちた。

本当に……最低だ。