例年だったら、忘年会は会社全体で社内の多目的ホールで行う。
料理やアルコール代金は、上限はあるのだろうけれど会社持ちだから、場所が社内ということもあって参加者も多い。

けれど今年は、どうにも都合がつかないということで、いくつかのグループかにわかれて普通に居酒屋さんで行われる運びとなった。

会社から出された金額をオーバーしてしまった分を参加者で割り自己負担となるらしい。

正直、そういった場合、ほとんど飲めない私みたいなのは損しかしないから本当なら欠席したかったけれど、さすがに〝忘年会〟と名前のある飲み会を休むのは気が引けた。

第二品管メンバーが全員出席で答えていたのも、私の背中を後押しした。

「篠原は飲みすぎたりしないから心配いらないだろうけど、一応、気を付けた方がいいかもね」

「そうですね。飲料メーカー社員が、急性アルコール中毒で搬送になんてなったら、後々社内でネタにされそうですし、上から厳重注意間違いなし……」

「そうじゃなくて、こっち」

見ると、工藤さんは真面目な顔でサムズアップする。
グッと空に向けて立てられた親指の意味がわからず、しばらく眺めてから……ああ!とひらめいた。

「もしかして、〝男性〟って意味ですか?」

小指を立てると女性って意味だから、もしかして……と思い聞くと、コクコクとうなずかれるから、呆れて笑みをこぼす。

「今時、中年男性でも小指立てたりしないんじゃないですか……」
「そう? まぁ、とにかく、男性社員のほうが多いだろうし気を付けて。篠原って他部署から見たら結構高嶺の花だと思うから、これを機に……とか考えてる人いそうって話。じゃあ私、こっちだから」