松浦さんからしたらただの遊びでしかなくて、松浦さんがこの一ヵ月私に向けてくれた言葉や笑顔や優しさは、今までターゲットになった女の子全員に分け隔てなく与えられていたものだ。
そこに特別なんてない。
すっかり忘れていた事実を思い出して、打ち込んだメッセージが送れないまま、スマホ片手にしばらく呆然としたのは、ほんの数日前のことだ。
そして、落ち着いた頭で考えた。
これだけ連絡してこないのだから、松浦さんはきっと、私をターゲットから外したんだろう。
一ヵ月構ってみても揺れない私を、もう無理だと判断して諦めたんだろう。
それは、私の勝利を意味しているっていうのに、気持ちが晴れないどころか逆に沈んでしまったのは……どうしてなのか。
その答えは私の中に既にあって、でも認めるのは怖くて……結局、放置したままだ。
「そういえば、明後日の金曜日の忘年会、篠原も出席だったよね?」
駅まであと少し、というところで聞かれうなずく。
駅前には大きなクリスマスツリーが飾られていて、その周りをぐるっと囲んでいるベンチには、何組ものカップルが座っていた。
ブルー中心の電飾が綺麗だな、と眺める。
「いつもは飲み会とか結構パスしちゃうから今回くらいは、と思って。たしか、お店貸し切るって話でしたけど、規模ってどれくらいなんですかね」
「とりあえず金曜日のは、うちと第一品管と、あと工務って話だけど。とくに決まりはないから、暇なひとは部署関係なくくるんじゃない」



