オオカミ御曹司、渇愛至上主義につき



駅近くにある薬局で買ったのは、鎮痛剤とゼリータイプの栄養補助食品、それとスポーツドリンク。

加賀谷さんから聞いた薬の名前を伝えて、併用しても大丈夫な鎮痛剤をとお願いすると、対応してくれた薬剤師さんは、私でも知っている有名な薬をすすめてくれた。

これなら私も普段飲んでいるし効果も体験済みだ。即効性もあるし、効いてくれるといいなと思いながら、駅からほど近い加賀谷さんのアパートを訪ねた。

築十年が経つという三階建てアパートは、外壁がレンガ調で可愛い。
以前、メンバーみんなで訪ねたときに、大家さんもこのアパートに住んでいるんだと加賀谷さんが教えてくれたっけと思い出す。

『大家さんが綺麗好きだから、毎日アパート周りの掃除してくれて助かる』と話していた通り、アパート周りも通路も、葉っぱ一枚落ちてなくて綺麗だった。

オレンジ色の照明が照らす通路を、部屋番号を確認しながら進む。
106号室。たしか、奥から二番目の部屋だった。

電話で教えてもらった部屋番号と昔の記憶が無事一致して、ホッとしながらドアの前に立ちインターホンを押すと、少ししてから中からガタゴトと物音がして鍵、ドアの順で開けられる。

ドアが開かれるにつれ、中から白い明かりと温かい空気がもれてくる。
ゆっくりと顔を上げると、すぐに加賀谷さんと目が合った。

黒いスウェット姿の加賀谷さんはおでこに熱さましのシートを貼っていて、その上をセットされていない無造作な髪が半分ほど覆っていた。

完全なオフショットは見たことがなくて、無防備な姿に一瞬胸が跳ねる。