オオカミ御曹司、渇愛至上主義につき



「松浦さん。今日、予定が空いていたらご飯食べて行きませんか?」

落ち込んだときにはおいしいものがいい、と言っていたのは松浦さんだ。

おいしい食事のおかげか、松浦さんに話を聞いてもらったからかはわからないけれど、あの時、私はたしかに元気をもらったから、そのお返しができたらいい。

そう思い誘うと、松浦さんはわずかに目を見開いたあと、ふっと表情を緩めた。
ふわっとした、柔らかい微笑みに〝あれ?〟と違和感を覚えた。

この人、こんなに素直な表情をしていたっけ?

やけに無防備に感じるそれに、思わず息を呑んでいると松浦さんが言う。

「友里ちゃんからの誘いなら喜んで。ご馳走するよ」

ハッとして「割り勘じゃないなら行きません」と返すと、松浦さんは苦笑いをこぼす。

「友里ちゃんは本当に男を立ててくれないよね」

クックと喉の奥で笑われ、目を逸らす。
すっかりいつもの調子を取り戻した様子の松浦さんに、内心ホッとしながら返事をする。

「松浦さんを立てないだけです。あとでなにか言われても困るので。
ご飯、和食でいいですか? あっさりしたものが食べたい気分なんですけど、松浦さんは?」

横目で窺うと、松浦さんはにこやかな顔で「よし。和食で決定」と言ってから、視線を宙に泳がせる。