オオカミ御曹司、渇愛至上主義につき



「いや。とくになんでもないんだけど。加賀谷さんと最近どうかなと思って」

それだけのことを、どうして誤魔化そうとしたんだろう。
不思議に思いながらも、私に気を遣ってくれたのかもしれない、とひとり納得して答える。

「別に……どうもないです」

エレベーターで下まで降り、駅に向かう。
松浦さんのマンションは大通りに面しているから街灯もたくさんある上、こんな時間でもたくさんの車が行きかっていて道は明るかった。

立地条件や外観内装の造り、そしてセキュリティ面から見ても、きっと、私の部屋とは家賃が相当違う。さすがエリートコースだなと感心する。

「寒いから」

道に出た途端、松浦さんが、持っていたマフラーを私の首にふわりと巻く。
思わず見上げると、にこりと目を細められ……スマートな行為とその微笑みに、どんな顔を返せばいいのかわからなくなり、顔ごと逸らす。

「友里ちゃん、今日はマフラー忘れたみたいだから、会社出てからずっと首元が寒そうで気になってたんだ」

よく気付いたな、と驚く。
今日は朝バタバタしていたせいで、マフラーは玄関に置いてきてしまった。部屋を出て数分歩いたところで気付いたけれど、戻るのは面倒だった。

「こんなところを、松浦さんに想いを寄せている子に見られたら、私きっとひどい目に遭います」
「もちろん、その時は俺が守るよ」

至近距離から目に毒な笑顔を向けられ、呆れて笑みをこぼした。