オオカミ御曹司、渇愛至上主義につき



「勘違いだったら申し訳ないですけど」

一分ほどの沈黙のあとで言うと、松浦さんが視線を上げて私を見る。
その、優しく、そして悲しい瞳を見つめた。

「松浦さんが誰かの一番になってすぐ関係をおわりにするのって、長く付き合って一番じゃなくなっていくのが怖いからじゃないですか?」

〝一番〟が松浦さんにとっての安定剤になっているのなら、なによりも恐れるのは一番じゃなくなるときだ。

そう思い聞くと、松浦さんは動揺した。

目が泳いでいる様子を、珍しいなと思いながら見る。いつだって笑顔の裏に本心を上手に隠しているのに。

「なんとなく、今まで松浦さんと過ごした時間のなかで思ったんです。松浦さんは、軽い男を演じてはいますけど、きちんと優しさも厳しさも持ってるし、誰かを想えないようなひとじゃないと思うんです。意外と、情は深い方なんじゃないかなって」

優しくするのは、私をおとそうとしているのだから当たり前かもしれない。でも、〝男女〟の関係だけには収まらない優しさや気遣いを、たくさん感じた。

カテゴリーでわけるなら〝友愛〟とか〝博愛〟とか、そういう押し付けがましくない自然な優しさを。

そんな気持ちを持っているひとが、誰かを真剣に想えないはずがない。

「だから、わざと誰も特別に想わないようにしているんじゃないのかなって思ったんです。あとで自分が傷つくことを避けて」