三十手前の男が、生い立ちで負った傷をいつまで引きずってるんだと思わないこともない。
生い立ちや経験から、みんな何かしら傷なんか負ってるし、苦しいのなんて松浦さんだけじゃない。
それでもどうにかして乗り越えて頑張っているのに、なにをいつまでそんな恋愛ゲームを繰り返して、すぐはがれちゃう絆創膏でしか処置できていないのか。
もっと本格的に向き合って治療ができるメンタルの強さを、三十にもなるのにまだ持っていないのか。
お説教のような考えが次々に溢れ出てきていたけれど、その、なにひとつも声にはならなかった。
〝そんな傷、友達とパーッと騒いで忘れるものだ〟とも思うけれど……それを私もうまくできないから。
私も、苦しいんだって誰にも打ち明けられず、傷口が開いたままひとりで歩き続けるしかできないから。
友達とのいざこざや失恋なんていう私の傷よりも、よっぽど深い傷を抱えたまま歩いてきた松浦さんに、唇をかみしめた。
なんて不器用で弱いひとなんだろう……と、悲しくなってしまって。
未だ、口元には微笑みを浮かべたまま目を伏せている横顔を見つめる。
この人は、イタズラに女の子を傷つけて喜んでいたわけじゃない。たぶん、そうすることでしか自分を保てる術を知らなかっただけだ。
仕事はあんなに器用にこなして、私にアドバイスまでくれるのに……自分自身のこととなると、なんて不器用なんだろう。



