オオカミ御曹司、渇愛至上主義につき



「前、今みたいな恋愛ゲームを繰り返しているのは、優越感に浸れるからだって、一番になれたって実感できて嬉しいからだって言ってましたよね」

会話のなかで、何度かそんな話をしたけれど、一番最初はあの水槽の前でだった。

あの時の水族館を思い出していると、松浦さんはわずかな間のあとで「よく覚えてるね」と笑った。

「初めのうちは、ただただ最低だなって思いが強かったんですけど、最近になって、松浦さんはどうしてそういう恋愛スタイルになったんだろうって考えるようになったんです。
それで……それって、松浦さんにとって〝一番〟がすごく大事だからなのかなって思ったんです」

じっと見ていると、松浦さんは困ったような笑みを浮かべた。

「やめない? こんな話聞いてもつまらないよ」

やっぱりなにか理由があるのか。

私をなだめて丸め込もうとしているような表情から目を逸らさずに言う。

「私をおとしたいって思っているなら悪くないと思いますけど。全部の女性がそうだとは言いませんけど、男性の弱い部分にキュンとくる女性は少なくないですよ」

松浦さんは、一瞬驚いた顔をしたあとで複雑そうに「うーん……」と微笑み、それから根負けしたみたいに息をつく。

「本当につまらないって保証するけど、それでも聞きたい?」
「松浦さんが話したくないならいいですけど。つまらないかどうかは、聞いてから私が決めます」

身体より数十センチほどうしろに手をついた松浦さんは、そこに体重をかけるような体勢になり「じゃあ、手短に話すけど」と口火を切った。