ティーパックの入った、ガラス製のティーポットにお湯が注がれ、見る見るうちに色が変わっていくのを眺める。
これと同じようなことが、今も稼働中の製造ラインの工程で行われているのか……と考えていると、「友里ちゃんはえらいね」と唐突に言われた。
視線を上げると、こちらを見て微笑む松浦さんがいて、首を傾げる。
「なにがですか?」
「キッチンとか、気を遣って必要以上に入らないようにしてるから。大学の頃、友達の部屋に集まってた時なんかは、よく女の子が〝片付けは任せて〟って感じで我が物顔でキッチンに立ってたりしてさ。
部屋の持ち主はそれを気にしてないみたいだったけど、俺だったら嫌だなって思ってた」
ああ、やっぱりそういうのを嫌うタイプか、と納得しながらカップを手に取る。
「私も他人に立ち入られるのは嫌なので、それだけです。それに松浦さんは、他人の作った料理が苦手って言ってましたし、余計に自分の部屋のキッチンなんて触られたくないだろうなと思ったので」
と、そこまで言ったところで、またいつかの松浦さんの発言が思い出される。
こんなに思い出すのは、ここが松浦さんの部屋だからだろうか。
いつもなら、関係ないことだしいちいち聞くまでもないと流すことだ。なのに、うっかりそれが声に出たのも、ここが松浦さんのプライベートな場所だからという理由かもしれない。
ふたりきりの特別な雰囲気が、距離感をおかしくさせていた。
「掘り返すようで申し訳ないんですけど」と前置きしてから、松浦さんと目を合わせた。



