「こういうのって、元々相手に好意を持ってるか嫌悪を持ってるかで変わってきますもんね。髪型とかメイクのことで訴えられちゃうひとって、元から嫌われてたんじゃないかなって」
個人差もあるのだろうけれど、私はそれを、例えば麻田くんや他の社員に聞かれたところでなにも不快には思わない。よく気付いたなとかそれくらいだ。
でも、多田部長に言われたら嫌な気持ちにはなってしまうと思う。
デスクに山積みになっている書類には目も通さないくせに、そんなところは見てるのかなって。
思ったことをそのまま説明すると、松浦さんは納得したような顔で「たしかにね」と相槌を打つ。
「恋人の有無だとか、結婚の話も、同僚としての関係がしっかり築けていれば日常会話として流されるしね」
「結局、日ごろの行いがものを言っている感じですかね」
そう結論づけてから、最後のひとくちとなったパスタを口に入れる。
もぐもぐとよく噛んでから「ご馳走様でした」と手を合わせると、一足先に食べ終わっていた松浦さんは「口に合ったみたいでよかった」と言い立ち上がる。
「友里ちゃんは座ってていいよ」と言われたけれど、甘えてばかりもいられない。
「食器を下げるくらいはさせてください」
本当なら、洗い物は私がしたいくらいだけど、他人にキッチンをがちゃがちゃ触られたくないだろうと思い、そこまでの申し出に留まる。
食器をシンクまで運び、テーブル前に戻ると、電気ケトルに入ったお湯を持ってきた松浦さんも元いた場所に座る。
食器には水を張っただけで、あとで洗うようだった。



