ローテーブルの上には、グレイのランチョンマットが敷かれ、そこに緑色が鮮やかなサラダと、話していた通りのクリームパスタが置かれた。

パスタの上には、パセリとブラックペッパーが振りかけられていて、お店で出てきてもなんの疑問も持たないような出来上がりだ。

「いただきます」
「ん。どうぞ」

手を合わせて言うと、ニコリと笑顔を返される。

斜め前に座った松浦さんが、にこにことしながら見てくるから、食べにくさを感じながらもパスタをひと口食べ……そのおいしさに驚く。

「おいしいです……とっても」

口元を手で隠しながら言うと、「よかった」と松浦さんは安心したような顔をしてから自分も食べ始める。

食事を一緒にするのは、もう五回を超えるけれど、やっぱりこうしてお部屋で……となるとわずかな緊張感があり、いつもとは違った。

モデルルームみたいに綺麗で、生活感すらあまり感じないけれど、それでもここは松浦さんのプライベート空間だ。そこを意識せずにはいられない。

松浦さんは、嘘こそつかないけれど、だからといって、手の内全部を晒すタイプではない。

軽い雰囲気を醸し出しているくせに、麻田くんみたいにただ明るく単純というわけでもない。

深みがある……なんて言えば、褒め言葉になりそうで嫌だけど、どこか一筋縄ではいかないような複雑なひとだと、何回目かの食事のときに感じ、その印象は今も変わらないまま私のなかにある。

そして、私が感じた複雑さが、この綺麗な部屋には詰まっている気がして……そういう部分にそわそわしていた。

松浦さんがいつか話してくれた〝脅迫観念〟という単語が頭に浮かんでいた。