私の前に、湯気を立てる紅茶を出してくれた松浦さんは、そのままキッチンに戻りYシャツを肘下までめくる。それから、まな板の上に並べた食材を切り始めた。
スーパーでの話の流れから、夕飯にはベーコンとしめじのクリームパスタを作ってくれることになった。
『それなら、生クリームとベーコンと玉ねぎ……牛乳は家にあるからいいとして……』とすぐに頭にレシピが浮かぶ松浦さんに、思わず『すごいですね』と漏らすと、『普通だよ』と呆れたように笑われたけれど、私にはその普通はできない。
メインがクリームパスタだからと、付け合せのサラダはさっぱりとしたドレッシングのほうがいいかな、とか。そういうことを瞬時に考えられるところもすごい。
普段からやっている証拠だ。
この容姿で、人当たりも柔らかく、さらには料理までできるとなったら無双だ。なのにどうして恋愛面だけがそんなにクズなんだろう。
そもそも、どうしてそんな恋愛観になってしまったんだろう。
鼻歌でも聞こえてきそうな顔でフライパンを握る松浦さんを眺めながら考える。
『他人のものとるのって楽しいんだよね。優越感が手っ取り早く得られるし、俺が一番だって証明されてるみたいで気持ちがいい』
イルカの水槽前で話していたことを思い出す。
あのときは、最低だな、とすぐに聞き捨ててしまったけれど……あれって、一番になりたいっていう欲求があるということだ。



