遠山さんの退職が明日に迫っている。
会社には慣れたものの、私の仕事のすべてを見てくれていた遠山さんがいなくなると思うと怖くて仕方ない。


「遠山さんがいなくなってから分からなくなったら、誰に聞けばいいんですか?」


私は感情を隠すのが下手だ。何気なく聞いたつもりだったけれど、不安が顔に出ていたのだろう。遠山さんは苦笑して私の頭を子供にするみたいに撫でる。


「大丈夫だよ、百花ちゃんなら。そうだね、でも困ったら美麗ちゃんに聞けばいいかな。もしくは主任か」

「俺もわかるよ」


向かいの席から声をかけてくれるのは瀬川さんだ。


「ああそうだね。瀬川くんでもいいねー」

「あ……その時はよろしくお願いします」


瀬川さんはすごくいい人なんだけど、勝手に気まずく感じてしまっている。
こういった時に、頼ってもいいよって言ってもらえるのは、すごく嬉しいことのはずなのに。

普段もてるわけでもないくせに、勘違いしているようなのが気恥ずかしくて、頭が混乱中だ。
瀬川さんに対してどう接するのが正しいのかわからない。