「あ、ありがとうございます。お借りします」
「俺は新しいパソコン持ってるから、それ、しばらく使っていてもいいよ。やり方わからなかったり、困ったりしたら電話くれる?」
「あ、はい」
「番号は書いておいたから」
「え? あ、は、はいっ」
戸惑いよりも、今回は嬉しさが勝ちすぎて、声が裏返ってしまった。
「もう戻っていいよ」とすぐに解放され、私はデスクの足もとに紙袋を置いた。
それからしばらくして、遠山さんが戻ってくる。
「お待たせー。続きやろうか百花ちゃん」
「はい」
「あれー、どうしたの顔赤い」
「いや、ちょっと温度が。暑くないですか?」
手で顔を仰ぎながらごまかすものの、遠山さんは不思議顔だ。
「そうかな。別に変わらないけど」
私の頭は単純すぎる。
難しく考えなくても、感情の動きが昨日瀬川さんに電話番号を教えてもらった時とは全然違う。
私、やっぱり、あさぎくんが好きなんだ。
再会したばかりだけど、どこがと言われたら、自分でもわからないけど。
だけど、彼は私の王子様だって、頭の中で何かが必死に主張しちゃっているんだもん。



