昼休憩を終え、戻った私は再び書類作成に追われる。そもそもの入力が遅いことにはみんなあきれ顔だ。
「百花ちゃん、ここの表作るときどうやった? 一個一個手入力してない?」
「え? 違うんですか」
「こっちからデータ引っ張ってきたほうが楽だから、覚えて」
普通に文書を打つだけならまだ大丈夫なんだけど、表計算ソフトとなるとそこまで使いこなせない。
遠山さんが説明してくれるけど、それを理解できるだけの基本知識が私に足りないのだ。
まさに、分からないところがどこなのかも分からない状態。
「うーんと。どうしようかな」
遠山さんも困り顔だ。
興味津々に阿賀野さんが覗いてきて「なんだ、手足の動きは速いくせに頭はそれほどでもないじゃん」なんて馬鹿にしてくるから、余計へこんでしまう。
美麗さんが無言で立ち上がり、戸棚の一番下段をガサゴソと探ったかと思うと、私の目の前に一冊の本をかざす。表計算のソフトの参考書だ。呆気に取られていると、美麗さんは照れたようにそっぽを向いて言う。
「貸してあげるわ。このくらい基本ですからね! 持ち帰っていいからしっかり勉強してきて」
「あ、ありがとうございます」
そのまま、ツンとそっぽを向いて行ってしまう。
「相変わらずツンデレだねぇ」
向かいの席でぼそりと瀬川さんがいい、「あれでどっかのすかした男に夢中じゃなきゃかわいいのにな」と相槌を打つのは阿賀野さん。
どうやら、美麗さんがあさぎくんに恋をしているのは周知の事実らしい。