え? 遠山さんならともかく、美麗さんがそんなこと考えてくれたの?
信じられずに二度見しちゃう。
でも美麗さんはあさぎくんのほうばっかり見ていて、全然目を合わせてくれないんだけどね。

一方、あさぎくんは彼女の提案に感心したようだった。


「ああ。そうだね。さすが田中さん、気が利くね」

「そんな。……当然のことです」


あさぎくんに褒められて、頬を染めている。
嬉しそうだなぁ、美麗さん。


「遠山さんの送別会の前に、部署全体でも歓迎会を企画しようか。今日は女性陣で楽しんできて」


そういうと、私の背中をそっと押した。


「頼むね、田中さん」

「もちろんです。行きましょ、仲道さん」

「は、はい!」


美麗さんについて会議室から出ると、あさぎくんの姿が見えなくなったところで、さっきまでの優し気な様子から豹変し、いきなりキッとにらまれた。


「何話していたの? 主任と」

「え? えっと……」


思い返すと、昔の話のほうが多かったな。仕事についての話というよりは、意思表明みたいな感じだったし。


「えーっと、ちょっとした世間話ですかね。あと阿賀野さんの件を少し……」

「なによそれ。主任は優しいからきつく言わないだろうけど、彼も今大変なのよ。あんまりくだらない用件で煩わせないようにしてよね。とにかくあなたは、与えられた仕事をもっと素早くできるようになってくれるかしら」

「はあ、すみません」