「お前は難しく考えすぎなんだよ。今を見てみりゃいいだろ。俺と茜とお前と萌黄。俺たちは結構いい家族だと思うんだが、どうだ?」
「そりゃ……そうだよ。俺はみんな好きで。だからこそ、自分だけ毛色が違うことを気にしてた」
金髪をツンと引っ張ると、父さんはいつもする「しょうがねぇな」って感じの苦笑を見せた。
「ずっと気にしてるけどさ。正直、俺からみりゃ羨ましい限りだぜ? 顔の出来はいいし、金髪だっていいじゃん。白髪になっても目立たない」
言われてみて、白髪交じりになってきた父の黒い髪を見る。
「……もしかして、白髪、気にしてるの?」
「ちょっと早いだろ。染めようかどうか検討中だ」
「ちょっと待って。ウケる。別に白髪になってもいいじゃん。似合わないわけじゃないよ」
「茜が年上のくせに若く見えるからさ。俺だってちょっとは釣り合いが取れるようにしたいわけ」
いつも豪胆な父のそんな悩みに、俺は腹を抱えて笑った。
もしかして、俺が気にしすぎただけだったのかな。
母さんの重荷なんじゃないか。父さんは俺のことが嫌なんじゃないのかな。
確かめもしないでひとり思い悩んでいたけれど。
思い返せば、母さんは時折、俺を愛おしそうに抱きしめてくれていたし、父さんもいつも俺のことを忘れたりしなかった。
俺が勝手に、見えるものを信じようとしないで、不安を増幅させていただけ。



