王子様と野獣


「で、なんだ? 相談って」

「うん。相談っていうか報告っていうか。……俺今、モモちゃんと付き合っていて。父さんの知り合いってこともあるし、あっちのご両親にご挨拶したいって思ってるんだ」

「……うん? 挨拶?」

「結婚とかじゃなくね。お付き合いしてますっていうのを」

「あー、そういうやつね。いやでも仲道さん相当子煩悩だからな。お前、追い出されるかもよ」

「そうなりたくないから相談にきた」

父さんは少し考え込んで、俺に一言二言助言をくれた。

「まあ、親父さんの子煩悩を認めてやれってことだよ。誰だって子供はかわいい。とられるって思う気持ちも分かってやれ」

「わかった」

お茶を飲みながら、俺はぽつりと問いかける。

「……父さんはさ。嫌じゃなかった? 母さんに俺みたいなコブがついてて」

途端に父さんは不満げな顔をする。

「どうして嫌だって思うんだ? お前がいなかったら俺が惚れた茜じゃないだろ」

「でも」

「……お前がいろいろ気にしてるのは知ってるけど、俺はあんまり頭がよくないからな。目の前にあるものを受け入れる主義なんだ。俺が惚れたのは、ひとりで浅黄を育てていた茜だから、お前がいないってことそのものがあり得ない。それに、茜が俺に惚れてくれたのだって、お前がいたからだろ。あいつ、男を信用してなかったもん。浅黄が懐かなかったら、俺に勝機はなかった」

「なんだよ、それ」