今日は笹谷木駅前商店街で、モモのかつての職場である『みやむら工芸店』の宮村部長とともに空き店舗の内部視察をしている。
モモの提案を生かし、この空き店舗をイベントスペースにするために、どういう手の入れ方をするのが効果的なのか分からない。それで、手作りイベントに詳しい方から意見を聞いてみたいと依頼して引き受けてもらった。

「意外と広いんですね」

「ええ。ただ奥行きのほうが広いので、外から見える範囲は狭いんですけどね」

「人を呼ぶには見える位置に完成品を置いたほうが目に付くでしょうね。作業はそもそも人に見られたいものではありませんからね。別段問題ないと思います」

宮村部長は三十代くらいの男性だ。少し太めで眼鏡の奥の瞳が落ち着きない。電話で話した時はもっとしっかりしたイメージだったから、ちょっと意外だ。

「ところで田中不動産さんがどうしてうちを?」

「ハンドメイド等のイベントをやっている会社だと社員から聞きまして。恥ずかしながらうちはこういったイベントスペースを展開するのは初めてなものですから」

「うちのお客さんですかね。だったら嬉しいなぁ」

「……そうですね」

その時、何となくモモちゃんのことは言わないほうがいいのだろうとふいに思えて、濁したまま話を勧めた。

水回りの配置や作業机、来た人が荷物を入れるためのロッカーがあるとよい、など実際にやっている人の話は参考になる。