王子様と野獣

考えているうちに明かりが消されて、次に来るのはキスの波。

「嫌なら……投げ飛ばしていいから」

「やっ、しないしそんなこと!」

ロマンティックな雰囲気をあっさり吹き飛ばされ、……だけど少しリラックスもした。
体を撫でていくあさぎくんは時折躊躇したように手を止める。

最悪、途中で吐かれそうになることも覚悟していた。
あさぎくんが本当に実のお父さんのことを乗り越えられたかわからないから。

だけど、あさぎくんは再び動き出した。その手はしっとりと私の肌を撫でていく。
ホッとしたのと同時に、自分から出てるのとは思えないような甘い声が飛び出した。

「あ……ん……」

「好きだよ、モモ」

止まらない。
そうしたらもう、私のほうが意識が飛びそうなくらいに気持ちよくなった。
初めて男の人に触れられる体は、考えていたよりももっとずっと敏感に反応して。
声にあおられたように、いつもより野性的なあさぎくんの瞳が私の体を見ているから、もう死んでしまいたいくらい恥ずかしい。

「や、もう、恥ずかしい」

「かわいいよ。モモ」

「……っ、ったっ」

痛みで、思わず手に力が入る。あさぎくんの腕をものすごい力で握ってしまっていて、これ絶対後で青くなってるって思うけど。
彼の体はゆるぎなく、私を押さえつけて抱きしめる。

『マウントを取られたら女性の力で男を押し返すことは無理だ』

いつだったか、あさぎくんに言われたっけ。

そうだね。男の人ってこんなに力強いんだ。
大きくて強くて。でも優しいから、普段は負けてくれてるんだ。

甘い痛みと、小さく震える彼の体。怖いのは多分私だけじゃない。
でもお互い、怖さ以上に目の前の人が欲しかった。

「……はあっ、あっ」

ひとりじゃ絶対に味わえない幸せを、大好きな人と分かち合える。
私、女の子に生まれてよかった。
今日くらいは野獣じゃなくてお姫様になれたかな。