私は今、自分が置かれている状況が理解できない。
会社の出入り口が見える喫茶店で、私はあさぎくんが出てくるのを待っていた。
それは別に声をかけるつもりではなく、ただ、本部長に叱られて落ち込んだりしていないか心配だったから、様子が見たくて。

待つこと二時間、ようやく出てきたあさぎくんは、あろうことかあっさり私に気が付いた。
おかしくない? 真正面に見えるとはいえ、通りの向こうだよ?

焦ってメニューで顔を隠したら、いきなり背後に人の気配を感じ、肩をたたかれた瞬間、驚きすぎて肘鉄をかましてしまった。


「ぐはっ……」

「え……。瀬川さん?」


瀬川さんが、体をゆがめて悶えている。私の肘鉄は彼の脇腹のあたりにヒットしてしまったようだ。
この状況! 阿賀野さんのときの再来か!


「す、すみませんー! びっくりして、ついっ」

「い、いや、……俺も驚かせて悪かっ……はあ」


と言いつつ、呼吸は荒い。相当痛かったか。


「大丈夫ですか? 座って休みます?」

「いや、出よう。さすがにこれは恥ずかしい」


そりゃそうだ。私も恥ずかしいよ。

私はよろける瀬川さんを支えつつ、会計まで行き、支払いを済ませた。
そして店を出たところで改めて謝罪をする。