レインがティアの世話を、自分一人で出来るかもしれないと安心したのも束の間だった。

村につくまでの間、レインの手は傷だらけで、顔もどこかげんなりしている。

それもその筈で、赤ん坊の内はどんな動物も手が掛かるのだ。

人間の赤ん坊でさえ目が離せないと言うくらいなのだから、勿論龍の赤ん坊も例外ではない。

ティアは賢い方だろう。だが、賢いからと言って、何でもこちらの思い通りという訳ではない。

ティアはレインよりも良く食べるし、ちょろちょろとあちこち動き回る。

そのお陰で、一回誰かの仕掛けたであろう落とし穴に落ちたり、猪用の罠に引っ掛かったりした。

好奇心旺盛なのはいいが、危ないところに平気で行くのは勘弁してほしい。

生まれたばかりのティアにとっては、全てがおもちゃの様に見えるのか、その辺の雑草にじゃれついたり、木に噛み付いたり、この前なんか蝶やバッタを追いかけ回して川に落ちた。

その度にレインが穴から引っ張り上げたり、川に飛び込んで助けたりしていたのだが。一番の問題はレインにじゃれつくことだ。

別に、遊んでもらおうとじゃれつくのはいいし、レインもティアが可愛くて仕方ないので、遊んであげるのは一向に構わない。

だが、じゃれつき方に問題があるのだ。

ティアは噛むのが好きらしく、色んな物に噛みつく。そして、レインの手にも噛み付くのだ。

龍の牙は一本一本鋭く、それは赤ん坊でも大人でも変わらない。

幼いうちから固い食べ物も食べられるだけあって、顎の力も凄まじい。

そして、力加減も下手だ。

本人は甘噛みのつもりでも、こちらは針でブスブス刺されているように痛い。

止めてと言って顔をしかめても、怒っているとは伝わっていないらしく、構ってくれていると思っているのか、余計にじゃれてくる。

取り敢えず、丈夫そうな木の枝を噛ませて遊んでもらっているが。

(私、お母さんやれるかなぁ?)

先の未来に不安を感じ、レインは頭を抱えて唸った。