『レイン』

声が聞こえる。

『レイン。私の可愛い妹』

「……姉さん?」

目を開けると暗闇の中、姉が両腕を広げて微笑んでいた。

「姉さん!」

懐かしさと嬉しさから、レインは姉へと走る。

けれども、どれほど走っても姉の元には行けない。

「姉さん!姉さん!!」

姉はただ笑って、両腕を広げるだけだ。

レインは一生懸命腕を振って走る。姉に抱きつきたい。頭を撫でてほしい。

頑張ったねと褒めてほしい。

「姉……さん」

視界がボヤける。姉に辿り着けない苛立ちや、悲しみから、心がジクジクと痛くなる。

『ガアー、ガアガア!』

ティアナの足元には、クックレオが暗闇から現れた。

「クックレオ!姉さん!」

レインは二人へと手を伸ばす。だが、足がもつれて転んだ。

「っ!……姉さん……クックレオ……」

手に力を込めて、顔をあげる。

すると、姉とクックレオは炎の中で張り付けにされていた。

「!駄目ー!!」

『貴女は、私の分まで……生き延びて』

鋭い牙が何本も生え、姉とクックレオを飲み込む。

あの時と同じように。

「いやぁぁぁぁぁ!!」

レインは地面へと顔を埋めた。涙が溢れ、ポタポタと頬を伝う。

『龍の卵だな。それをよこせ』

『お前達人間は、食べる必要のない存在を食べる。自己満足を満たすために』

黒髪の青年と、赤髪の少年の声が響くと、レインは顔を上げる。

すると、ふわふわと金色の卵が浮いていた。

「………ティア」

レインはティアへと手を伸ばす。ゴツゴツとしていて固いのに、とても温かい。

レインはティアを抱き締めた。

「……私が、守る。そうあなたに約束した」

『…………とう』

「?え?」

懐かしい声が聞こえた気がし、レインはティアを見る。
その瞬間、光が弾けた。

「!!」