「……美里? 突然どうした?」
高柳さんは、困ったような表情を浮かべた。
それなのに穏やかな笑みはそこに健在。
これほど私に悪態をつかれているのに、まだ優しい声色の高柳さんに苛立ちがいっそう膨らんでいく。
私は間違えていない。
高柳さんが本音を見せてくれないせい。
その優しさにだって、裏側があるでしょう?
全部が全部、許せることばかりじゃないでしょう?
「もっと……もっと強いところを見せてよ! もう、こんなのいやなの!」
自分で処理できない感情を持て余しているだけなのに。
理不尽な言いがかりをつけているだけなのに。
高柳さんの優しさが、私をどんどん醜くしていく。
このままここにいたら、高柳さんのことも自分のことも大嫌いになってしまう。
バッグを強く握り締め、通された待合室を飛び出した。
……私、なにやってるんだろう。
走り出してすぐに、小さな後悔が思い出したようにやってくる。
かといって、あそこまで暴言を吐いた以上、のこのこ戻ることなんてできない。
途中まで背中に感じた高柳さんの気配は、式場を飛び出したときには消え失せていた。



